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2013年6月

2013年6月 5日 (水)

大学の国際協力活動への参加の評価(2)

ちょっと時間があいてしまいましたが、評価学会での議論の続きをご紹介いたします。

私の次の福岡女子大学の和栗教授の報告は、10年近く続けらてれいる「海外体験学習研究会」の活動を紹介しつつ、実際の活動について学生が作成した映像による活動報告を用いながら、受け入れコミュニティー側の視点が希薄になりがちになるのであれば、受け入れ側の視点への留意を学位(ディプロマ)プリグラムの中で主流化すべきであること、現地での活動を一過性で終わらせないための振り返り(リフレクション)や事前・事後の学習の構造化と大学の教育目標と方向性の整合性確保(アラインメント)が重要であることなどが報告されました。アラインメントという用語は、現地で援助側が非援助側が「援助協調」を行う必要性をいうときに使われていますが、援助する側あるいは援助される側にとっての首尾一貫性も必要という意味で、縦横のアラインメントが同時に確保されるべきであるという視点が提起されたと思います。

11続く2報告は学部レベルの教育プログラムを超えた、研究あるいは専門人材育成などのレベルでの大学の国際協力への取り組みに関するものす。最初の東京大学長尾教授の報告では、私立大学、国立大学、さらには国際協力専門の大学院を設置しているなどで国際協力を行う条件はかなり異なり、学部レベルでの教育を重視する大学では研究や専門人材の育成のレベルでの協力が難しいことなどの限界があること、国際協力の掛け声の中で個々の教員が孤軍奮闘する状況になっていることが指摘されました。この上で、知識ベースの国際協力の展開の重要性、各大学がそれぞれできることを明確にして援助機関と更に連携して協力していく必要性などが強調されました。

最後のJICA小林氏による報告では、援助を取り巻く環境(グローバルな課題)と日本国内の環境(少子高齢化、グローバル人材のニーズ)を前提条件として、日本の国際協力の質的向上のためにはJICAと大学との連携をさらに強化すべきであること、各大学が位置する地方の特性を生かして地域活性化のための産学官連携の役割が期待されておりこれは国際協力の大きな柱にもなりうること、これらのためにはJICAの側での事務手続きの簡素化等の改善に加えて、大学の側でも国際化や開発事業への参加の学内評価を重視すべきであることなどが指摘されました。

12質疑応答では、大学の教員にとって国際協力活動への参加が学内で評価される体制ができていないことが大きな壁になっていることが議論になりました。また、国内の課題とグローバルな課題は結びついており、課題設定の方法にも検討すべきよちあるいは大きな可能性があることが指摘されました。

大学の国際活動が盛んになったのは1990年代以降で、特に90年代前半には国立大学を中心に国際協力を専門とする大学院が作られています。これらの、国の文教政策としての国際協力全体の評価については今回議論ができませんでしたが、これに関する評価を充実されるべきであるという意見が質疑応答で出され、今後の検討課題であることが確認されました。

今回のセッションは、OECD-DACの評価5項目でいう妥当性(relevance), 効率性(efficiency), 有効性(effectiveness), インパクト(impact), 持続性(sustainability)のうち「有効性」や「インパクト」に焦点をあてることが当初の目的でしたが、議論の展開の中から実は妥当性(relevance)こそが問題ではないかという観点も出てきたと思います。それはとりもなおざさず、それぞれの大学が社会の問題をどのように解決するのか、できるのかという取り組み(=大学の問題解決能力)が基本となるべきであって、そこから各大学が国際協力において果たすべき、果たし得る役割が生まれてくるということです。このためには大学のアドミッション(入学)、カリキュラム、ディプロマ(学位)の各ポリシーの中で、役割と目標を定めて整合的なアプローチをとっていくことが必要です。

今回、日本評価学会で大学の国際協力活動の評価をセッションのテーマとしたのは初めてでしたが、今後、質疑応答で議論されたことなどを踏まえて、継続的にとりあげて深化させていきたいと思います。

写真(1) 2005年東ティモールのボランティアより。「改良窯」や「ソーラークッカー」のデモンストレーションを行ったが、地元に内発的な動機や意志がなければ定着しない。「自分がよいと思っているものを持ち込むことはよくない、というのが学生の大きな「学び」。

写真(2) ボランティアで修理した孤児院のドアノブ(2004)。翌年には跡形もなくなっていた。持ち込み型の援助が援助依存を生むことを実体験。

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