« 女性グループの挑戦と課題-タンザニア | トップページ | 授業ダイジェスト「地域研究アフリカ」(1) 地図にミスリードされるアフリカ観・身近なアフリカ »

2013年4月 6日 (土)

中国とアフリカ、日本の立ち位置

3月21日から31日までケニア、タンザニア、クウェートとまわりました。ちょうどこの時期、中国の習近平主席がタンザニア、南アフリカなどいを歴訪した時期と重なり、特に私がタンザニアのダルエスサラームに到着したその時間帯は習近平主席が出発する時間で、空港周辺で交通渋滞に巻き込まれたりしました。そういう時期でしたので、アフリカのおける中国のプレゼンスがどうしても気になりました。

Img_0304まず、最初に訪問したケニア。 ナイロビに到着しチェックインしたホテルの中は中国語だらけ。1年程前にオープンした中国人資本・経営の「東土大酒店」(Eastland Hotel)です。館内の表示がすべて中国語であるだけではなく、内装や調度品も中国から運んできたようでまるで中国出張に来たみたいに感じました。中国でも最近は内外装とも国際レベルのホテルが増えてきている中、ある意味、中国国内以上に中国的に感じます。宿泊客は中国人が大部分でしたが、欧米人もいて中国人専用というわけではないでした。レストランの中華料理は中国国外で食べられるものとしては最高のレベルでした。

2013_0327056それよりも驚いたのはタンザニアの首都ダルエスサラームから西に約250キロのサバンナの真ん中、私がフィールドにしているキロサへ行く途中のマサイ族の遊牧地に突然切り開かれた土地が出現していて、漢字の標識で「神農公司」と表記されていたことです。どうやら中国の農業会社が購入したらしいですが、このような奥地でいったい何を栽培するのでしょうか? 中国の企業が農業生産を目的としてアフリカの土地を購入していることはニュースで伝えられていますが、やはりこの目でみると驚きます。今、問題になっている土地収奪" Land grabbing"に相当するものかどうかはただちに判断できませんが、この周辺が遊牧民の生活圏であること、農耕民と遊牧民がこれまでも土地利用をめぐるいさかいを起こしていることから考えて、収奪ではないかとの懸念を打ち消すことをできません。このような部族間の利害相反の間隙や分断を縫って土地を取得したようにも思います。同行の現地の方はマサイ族ではないので、特に意見は言いませんでしたが”Chine is terrible"(中国はすごい) とつぶやいていました。しかし、一番近い町からでも未舗装の道路を50キロほど走った山中のこの場所は不便極まりないところです。習近平主席がタンザニアを就任後最初のアフリカ訪問国に選んだことが示すように、中国はタンザニアにかなり力を入れています。これから中国は道路整備も支援していくのかもしれません。

2013_0329004中国のアフリカ支援は今に始まったことではありません。1970年からタンザニア・ザンビア間の鉄道建設などを支援してきたほか、私が北京に滞在していた1980年代前半には北京の語言学院をはじめとする教育機関には多くのアフリカ人留学生が来ていました。中国政府はアフリカ諸国の大使館設置に際しては事務所や大使館員の居住施設を優遇していました。地価の高い東京への公館設置をせず北京の大使館が日本を兼轄していた国もいくつかありました(まだあると思います)。それは、第一には国連などでの多数派工作に資するものと戦略的に位置づけていたことは明らかです。この結果、アフリカ諸国とって中国はかなり寛大な援助者になっています。もっとも私が北京にいたころ、アフリカ人の留学生が起こした婦女暴行事件が中国人のアフリカ人蔑視意識に火をつけて、これに対しアフリカ人側も抗議するなど、かなり険悪な一幕もありました。

中国の対外援助は欧米と違って「人権」等の条件をつけないのでアフリカ諸国からは歓迎されてていますし、道路や港湾などの基礎的なインフラが得意なのは日本と同じです。かって、日本の援助も、現在中国が批判されているの同じ理由、すなわち人権軽視、貧困対策よりインフラを重視しているなどと(主に欧米諸国から)批判されていたことがありました。一方、ザンビア出身のダンビサ・モヨさんは「援助じゃアフリカは発展しない」の中で、”中国はビジネスと割り切ってインフラ建設の支援の見返りで資源確保しているので、アフリカ諸国にとってもわかりやすい。道路は産業発展のために不可欠だがアフリカは整備が遅れている。中国のインフラ支援は効果をあげている”、ということを強調しています。中国のコントラクターは自国からアフリカの悪条件でも比較的低い賃金で働く技術レベルの高い労働者を連れてくるので他の国は太刀打ちできないです。アフリカだけではないですが、日本の援助でインフラの土木工事を行う場合でも、国際入札にかければ中国の建設会社が競争力があって有利です。例えば日本の円借款で実施されているケニアのモンバサ港拡張事業は中国の建設会社が落札し、現在工事が進んでいます。

001098では、日本の立ち位置はどうしたらよいのでしょうか? 私はこれまでの日本のインフラ中心の援助は重要だと思います。特に都市インフラの分野、マス・トランジットなどはそもそも日本の得意分野です。一方で、これからは工事や事業によって影響を受ける人々への社会配慮や環境配慮を強化していかなければならないと思います。以前、私がインド担当だったとき、道路プロジェクトで「立ち退き」の問題がありました。実は道路用地に住んできたのはインド側に言わせれば「不法占拠」者だったので、インド側は「立ち退かせる」の一点張りでした。私は合意議事録に今住んでいる人の生活権が確保されるような規定を求めたのですが、「法的な権利がなけば保護はされない」という限界を突き破ることができず、結局「人道的に対処する」という言い方で妥協せざるを得ませんでした。はっきり言って、それ以上抵抗しても今度は背後(日本政府)が後押ししなかったでしょう。当時、ナルマダダムやネパールのアルンIII水力発電所などなど大きな論争になった事業もありました。ナルマダやアルンは世銀との協調融資でしたので、世銀が設置した第三者パネルや外部専門家の調査結果を踏まえる形で事業は中止になりました、ただ、ナルマダダムはそのあとインドが独力で完成させています。途上国政府は経済成長を加速したいということから、往々にして人権や社会、環境配慮を煙たがります。そこが中国が歓迎されるゆえんです。

しかし、成熟した先進国として、人権や社会・環境配慮を重視していく方向こそが、日本が提供できる国際公共財だと思います。それは日本のソフトパワーを高めることにつながっていき、いい意味で中国などを牽制していくことにつながります。タンザニアのお隣のモザンビークでは日本とブラジルが進める大規模農業開発事業が論争になっています。影響を受ける人が十分納得できるだけの説明や、無理であれば引き返す勇気が必要です。日本が進出しなければ中国が進出してくる。それはそうかもしれませんが、だからと言って日本が中国と同じことをしてもいいということではありません。むしろ、人々の人権を確保し生計を支えるためのルール作りに積極的にコミットすべきだと思います。「日本がいたからこそこれだけ配慮してもらえた」というところが鍵になります。そのためにも各方面とのコミュニケーション能力の強化は不可欠です。そのうえでインフラ整備を進めていくことが重要だと思います。

写真(1) ナイロビのEastland Hotelのパンフレット類 すべて中国語
写真(2) サバンナの奥地に漢字の標識と赤い星。「神農公司」
写真(3) ダルエスサラーム市内 習近平主席歓迎のバナー
写真(4) ネパール「アルンIIIプロジェクトの現地対話集会」1992年6月

« 女性グループの挑戦と課題-タンザニア | トップページ | 授業ダイジェスト「地域研究アフリカ」(1) 地図にミスリードされるアフリカ観・身近なアフリカ »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/550886/57119299

この記事へのトラックバック一覧です: 中国とアフリカ、日本の立ち位置:

« 女性グループの挑戦と課題-タンザニア | トップページ | 授業ダイジェスト「地域研究アフリカ」(1) 地図にミスリードされるアフリカ観・身近なアフリカ »

最近のトラックバック

2016年9月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
無料ブログはココログ

Twitter