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2013年3月

2013年3月28日 (木)

女性グループの挑戦と課題-タンザニア

2008年以来、大震災の年を除きタンザニアの首都ダルエスサラームから約200キロのモロゴロ、さらに100キロほど奥地のキロサを訪問して途上国農村の定点観測を行っています。2009年にはキロサの町が水害に襲われ、その後2010年、2012年および今回の3回、その後の住民の変化を追っています。この被災地の状況につきましては別項で論じますが、今回はモロゴロ市内で始まった女性グループ所得向上運動についてまず報告します。

Sdsc_0325このグループはNeemaといい、私の研究協力者であるジョージ・ピンドゥーア氏(モロゴロ在住)が昨年立ち上げたものです。女性の所得向上により家族の健康や教育など福祉レベルを向上させようという目的や、ローカルな資源を所得向上のに活用しようとするところは現在世界各地で行われている同種の運動と共通です。

Neemaはバティック(ロウケツ染め)の衣服、石鹸作りなどを行っています。グループのメンバーから小額の資金を集め、それを活動の投資資金とし、利益を分配するスキームです。現在30人のメンバーですが、将来は同規模のグループを10件ほどまとめて300人ほどの規模にするほか、相互扶助の小規模金融(日本で言う無尽や頼母子講に相当)を展開する計画を持っています。参加している女性はだれもが積極的に取り組んでいます。

まだ立ち上がったばかりの運動ですが、早くも課題に直面しています。私はこれまでインドの女性自助グループ(Self Help Group:SHG)などを見てきましたが、グローバルな動向や経験を踏まえてディスカッションを行いました。

まずは資金です。メンバーの拠出だけに依存しているので、限界があります。外部からの借り入れもありません。私が見てきたインドの女性Self Help Groupでは、最初の立ち上げ資金を公的に支援しているケースがあり、これには日本のODA資金も使われています。事業を立ち上げのための設備資金などは自力cで調達するのはかなり困難です。日本の小規模無償を適用できるような方途を考えてみたいと思います。

Sdsc_0323_4次は販路。現在International Trade Fair Farmers Day その他の地元のイベントに依存していますが、回数も少なく安定的な販路となっていません。店を開く資金もありません。このあたりは、外国のボランティアやNGOを活用する可能性を議論しました。最近までザンビアで青年海外協力隊で村落開発の仕事をしていた私のゼミの卒業生がいます。彼女は任地で同じような女性のグループ活動を支援していましたが。販路のひとつとして日本で販売することを試み、私のゼミ生が学園祭で出展して完売しました。小さなイベントではありますがまずは第一歩です。輸送費の問題や日本で売れる商品開発(*)の問題など解決すべき問題はありますが、さまざまな販売のチャンネルが考えられますので、今後協力していくことで合意しました。

(*)洋服は現地サイズでは日本人の体型に合わないのでポーチやショール、アクセサリーなどの方が適しています。

活動場所も大きな問題です。生産拠点と販売拠点(店)の確保が重要ですが、現在の資金力ではかなり難しいです。現在はメンバーの家などを転々として活動していますが、拠点が確保できれば生産力はかなり向上します。

Sdsc_0328基本的には生産規模が小さいことがすべてのネックになっています。たとえば石鹸は貧困層向けに小さな容器で販売したいのですが、適切なサイズのボトルを安定的に確保することができす、やむを得ず、現在は大型のボトルで販売しています。生産量が多くなれば特注できるはずです。バティックの原材料も大量購入ではないために割高になっています。生産規模を大きくすることが不可決ですが、そこでのネックはやはり資金です。

将来計画としては養鶏、果物およびその加工、また前述の小規模金融などへの事業拡大を目指しています。資金あっての話ではありますが、私からは地元に資源の活用、あるいは地元に昔からある伝統的な知識や技法の活用をアドバイスしました。たとえばインドのSHGが取り組んでいる伝統的な医療(アーユルヴェーダ)で使用する薬草の栽培や地元の果実を利用したジュース作り、日本の徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」などは、製品そのものではなく、アイデアや方法論として参考になるでしょう。

このグループで特に力を入れているのは教育や人材育成です。グループメンバーがお互いに知識を持ち寄って仲間で能力向上をはかっていくというスキームです。これは特に注目される点だと思います。

Neema Hisaの活動は、インドのSHGなどと比べて特に目新しいものではありませんが。立ち上げたばかりの活動にはエネルギーがあります。私が定点観測を続けてきた地域で展開され始めた活動ですので、ぜひ協力しながらフォローしていきたいと思います。

2013年3月17日 (日)

震災から2年。3月11日「ルーテル教会救援・となりびと」報告会

震災2年目の3月11日、新大久保の日本福音ルーテル東京教会での「東日本大震災より二年を数えて礼拝と報告会」に出席しました。報告会は震災直後から始まった「となりびと」救援活動の2年間の総括と最終年度となる3年目の予定の説明です。私も2011年4月から「となりびと」に参加し現地に9回行きました。「何もできない」という感だけが強くなっていたのですが、礼拝での小副川牧師の説教は「なにもできなくても支援しようという気持ちと祈りがあれば・・・」というものでした。私が昨年行った花苗を持ち込んでの花壇づくりはそれなりに役に立っているようで安心しました。

以下、報告会での仙台常駐スタッフの佐藤文敬さんの現地報告メモを引用します。現在の被災地の状況や課題をコンパクトにまとめていただきました。

<佐藤文敬さんの報告引用:林がメモから再構成しました>

Dsc_00011.現在の深刻な問題の一つは、復興事業のための書類作成、整理など事務量が爆発的に増大していることである。特に土地や建物にかかわる書類の作成ができる専門職が、発注する行政の側も応札・落札する業者の側にも不足している。大槌町や陸前高田市では他の自治体から応援に来ていた職員が自殺するという事件が起こった。NGOにとっても事務は大きな負担になっている。

2.もうひとつは、復興工事のための資機材の需要が爆発的に増加していることであり、工事の遅延、価格の高騰による予算オーバーなどを招き、復興を遅らせる原因になっている。

3.仮設住宅の問題も引き続き深刻である。仮設住宅から出られる見込みが立たない・ん売

(1)集団移転の着工は全体の一割にとどまっている。岩手、宮城、福島の3県で津波浸水地域から内陸や高台での住民集団移転を予定する286地域のうち、造成工事に着手したのは2月末現在で33地域(11.5%)にとどまっている。用地確保の難しさや設計にあたる自治体職員の不足が事業の進捗を阻んでいる。工事の入札の日蝶がこれに追い打ちをかけている。福島県では原発事故による立ち入り制限地域がある関係で計画すらできていない。

(2)仮設住宅では一旦は機能し始めた自治会が崩壊しつつある。これは自立できる人から仮設住宅を出始めていることによる。自治会長などを務めることができる人は自立も早い。結局、自立困難な人が残され、自治会長を担えるひとがおらず自治会活動もままならなくなってきている。

(3)仮設住宅の立ち退きの問題も生じている。気仙沼市で7所帯が入居する仮設住宅では地権者からの立ち退き要請を受け、2014年1月までに仮設住宅を撤去することになった。この背景には仮設住宅がある地域は津波の被害を受けなかったために地価が上昇しており地権者としては売却したという意向がある。現在の仮設住宅住民は今年10月までに退去し他の仮設などに転居しなければならない。そのあと市が期限までに更地に戻す。住民の間では別の仮設で人間関係などになじむことができるかどうか不安の声が上がっている。

4.被災者のトラウマも深刻な問題である。ある被災者は「あの日のことを話そうとすると変な汗がどっと出てくると話している」。別の被災者は「なぜかわからないけど、必要なくても被災前に持っていたものをどうしても買いたくなる」と話している。またこどもが学校で「家なし」「親なし」と言っていじめられているケースもある。

5.このよう状況の中でまずそれぞれの地域で避難してきている人を気にかけていくことが必要である。被災地で活動を続けているNPOを支えること、被災地の物品を買い続けること、ときどき遊びにいくこと(お話を聞く「傾聴」が重要)、手紙・メールを書くこと、被災地の報道に敏感になり、反応することなども重要な支援である。

6.2013年度は3年間の「となりびと」の活動の最終年度にあたる。この一年(1)仮説、地元団体・グループ支援プロジェクトを通じて被災当事者による支えあう関係を支援すること、(2)被災した地域の復興のために、コミュニティーセンター・漁協倉庫再建などの支援を行う、(3)大震災から学び次の大規模災害に備えるための被災地スタディーツアーやセミナーなどの防災・減災力向上プロジェクトを実施いていく。

<引用終り>

活動期限がある組織的活動はその期限が重要ですが、その先は個人が課題を見つけて個人で対応していく段階になるのだと思います。悲惨な災害の中に一つだけ積極的意味を見出すことができるとすればそれは人々のつながりの、自分の隣人(となりびと)であることの確認だと思います。

私自身は前日のようにこれまで9回現地に足を運んでいますが、最初は住宅地の泥出し作業、続いて託老施設や保育園の復興のお手伝いをしました。そのころから趣味で育てている花を被災地に運んですこしでも雰囲気をよくする活動も行いました。また、石巻の社会福祉協議会など関係で支援物資の整理作業や英文のボランティア向け注意書きの作成お手伝いもしました。「となりびとの」英文資料作成などお手伝いしました。微力ではありますが、なにかの役にたったとしたら望外の幸せです。

Dsc_0002_4左の写真は、昨年3月石巻の仮設住宅でお茶会をやっていたときのものです。そこに地元の「河北新報」の記者が訪れて何枚か写真をとっていきました。まさか私が写っている写真が掲載されるとは思っていなかったのですが、恥ずかしい限りです。

(2012年3月11日 河北新報)

2013年3月15日 (金)

インドのNGO”Goonj"(3) 質問に答える

Dsc_0043(1)都市で多くの凍死者が出ているという話が冒頭であったが、CFWなどの活動は農村で行われている。オペレーションを都市と農村で分けているのか?

→都市の方が支援活動は簡単なので、都市では多くの支援活動が行われている。一方で農村への支援をほとんど行われてない。このギャップを埋めることが必要である。 農村もデリーと同じように寒く、穴を掘って草を敷いて寝る人もいる。また貧困が農村から都市へプッシュファクターになっている。農村の状況を改善することで、都市の問題の軽減につながる。CFWは都市でも一部実施しているが、環境改善、緑化などの事業が中心である。これに対し農村は基礎的なインフラの事業を行っている。

Dsc_0047(2)法的ステイタスはどうなっているか? 財務的に成り立っているか?

→(社会企業家という言い方もしているが)非営利法人として登録している。常勤のオフィサーは8人。費用は最小限でとどめている。費用の大部分は上に述べた「ロジスティクス」。活動の中で20%を組織維持のための収入確保にあて80%は活動そのものに使用している。50%の寄付は個人からいただいている。資金調達オフィサーを置いておらず、WEBベースで資金を集めている。ローカルマーケット、道端のマーケットなどがあるので、これと競合しないようにしている。ここ数年間、活動規模は拡大しているがロジスティクス以外の経費は増えていない。紙は創立以来14年間新しいものを購入したことはなく、すべて反古紙(裏紙)を使用している。

(3)製品の輸出はしているか?

NPOは規制で制限されている。

(4)生理用品は販売しているのか?農村貧困層に支払い能力があるのか?

→原則として有償で頒布している。価格は1パック2~10ルピー。CFWの場合は貧困層の現金収入が限られているので労働の対価として支払うことに意味がある。インドでは最近マイクロファイナンスが普及しているが、マイクロファイナンスだけで支払い能力が向上するかどうかはわからない。

(5)写真の説明にあったジーンズでdignityを回復することになるのか?服装文化にどの程度注意をはらっているのか? ジーンズで信用を高めることはできないのでは?

→文化には注意を十分払っている。特にインドでは地域ごとに服装文化が異なる。ただ、最近ではジーンズやバミューダも農村で普及しているので着用することには問題はない。伝統的な衣服より快適で評判がよい。伝統的な衣服はカースト差がわかってしまうことがある。行政窓口でとりあってくれないという待遇を受けた人が、服装を変えただけで役所の対応が変わり相手にしてくれたということもある。

(6)それは服装による「偽装」ではないのか。本質的には差別をなくすということだろう。

→衣服で印象や心理状態が左右されるのはインドに特有かもしれない。

(7)Dignityとは何か。JICAプロジェクトではシャワーの設置を女性のエンパワーメントに資するものと言っているが、それはそういうことなのか。

Dignityは生きることへの誇りや自信を獲得することだが、そのきっかけは様々だと思う。シャワーもそうかもしれない。服装は最も重要な要素だと考える。新しい生活が新しい行動、態度を生み出していく。

(8)生理用品というのは女性の着想か?

→自分(Gupta氏)の着想である。2004年のインド洋津波の際に多くの支援衣服が使われずになっていたので、その時実験をはじめ改良を重ねた。デザインに1年以上かかった。州、文化によってサイズもことなる。再使用を奨励している。しかし、水が少ないところでは困難なこともある。

(9)働けない人、CFWに参加できない人は衣服の支援を受けられないのか?

→子供は児童労働になってしまうので働かせることができない。障碍者、妊婦などには無料で配っているが、これは家族の一人が働くことによって家族メンバーにも配布する方法をとっている。このためのファミリーリスティングは村民が自ら行い、ファミリーパックをつくる。災害直後などではCFWの実施は困難。このような特別な場合は無償で物資を配布するが、村民のオーナーシシップ尊重し村民が決める。また、配布された物資が村民の間で交換することには異を唱えていない。

(10)転売はあるか?

→たまにはあるが頻繁ではない。100%なくすことは難しい。コンピューターウイルスの侵入を100%止めるのができないのと同じ。

Dsc_0046(11)パラレル・エコノミーとフォーマルエコミンーの間のテンションはないのか? 日本でも津波被災地でボランティアの持ち込んだ物資が民業圧迫になるというクレームがあった。

→全体の社会経済状況が歪まないように注意を払う必要がある。政府の役割と重ならないようにもしている。人々をmotivateして政府に行動を要求する方向へ促している。タミールなどではNGOが住宅建設をしていたが、これは本

来政府の行う仕事であった。政府として必要な資金を拠出してもらわないと困る。政府ができることをNGOが行うのはNGOの資金の無駄使いである。

→ブランド品の場合はブランド品のイメージを守るために普通は企業は廃棄処分にしている。しかし、農村への支援物資ということであればブランド品の市場ではないので企業も不用品を提供しやすい。このようにして、フォーマルマーケットを補完して無駄を省き、企業のCSRにも貢献している。

(13)Dignityの改善といった場合、何が基準になるのか?

→どのように生活や意識が変わったかが重要である。社会的インパクトでいえば女性が自由に意見を表明できるようになることなどを重視している。数量的指標にすると人数や金額などが目標になりゆがみが生じる。質的(qualitative)評価が重要。

(14)東日本大震災への被災地へ行くと伺ったが、なにか参考になることはあるか?

→子供のトラウマ・ケアが重要である。インド洋津波では子供に絵を描かせると90%のこどもたちは水や溺れている場面を描いた。そのようなもの忘れおもちゃなどで遊ぶ場をつくる。外界からあえて遮断し残酷な現実から切り離すというような対応を行った。

 

インドのNGO"Goonj"(2)「パラレルエコノミー」

(4)Goonjはこのようなノンイシューに対処しようとしているが、その基本的な考えは慈善(チャリティー)ではなく「パラレル・エコノミー」、つまり通貨やリソースのオプションを広げることである。チャリティーを100%否定するものではないがチャリティーは人々の依存心を高めてしまう。Goonjは人々の尊厳(dignity)を重視し依存心を起こさせないようにしている。まず衣服の重要性を人々に理解させる。そして作業に対する対価として開発事業に参加した人に衣服を提供する。これが"Cloth for Work"CFW)の活動である。そのまま、あるいは軽易な補修で再使用可能な衣服はCFWに使用される。そのままでは使用できない衣服はバッグなどに加工する。また、木綿の生地などを利用して生理用品を制作する。女性用下着もノンイシューである。貧困層では清潔な下着を着用している人が少ない。これも生地を利用して女性下着を制作する。さらに、ジーンズバック、携帯パウチ、テープを廃物利用したバックの制作も行っている。廃物は家具、スポーツ用品すべてリサイクルすす。残りの素材は、マットレス、毛布、キルトなどに加工する。100%廃物利用であり、きわめて環境フレンドリーである。これらは素材などを提供して農村の生計向上に用いられるものと、Goonjが自ら販売して活動費用に充てるものがある。いずれにせよローカルマーケットを創ることは冬の衣服問題も対処にもつながる。Goonjの活動は都市から発生した不要の衣服や日用品、学用品などを通じて都市と農村を結びつける効果があると考える。

Gedc1576(5)CFWの開発事業は道路や橋の建設、用水路の浚渫は池の泥さらいなどである。どのような事業をするか村の話し合いで決定する。このプロセスでコミュニティーをまとめる効果が期待される。金銭で賃金は支払わず衣服や家庭用品を提供する。貨幣ではなくモノ(もともとは都市で廃棄されたもの)が通貨となる。キャッシュをつかわない。賃金も金銭で払わない。これがパラレル・エコノミーである。事業のコストはローカルの材料を使うことにより極力低く抑える。橋の建設では地元の竹などの材料を使うために一件当たりの材料費は80ドル以下に抑えられている。維持管理は住民が行う。学校の整備では図書室の備品、学用品や本は都市で発生した廃品、不用品を再利用する。Goonj70%80%まで完成したところで、政府の「雇用促進プログラム」に引き継いで残りは政府によって完成されることもある。これは政府が責任を持つ「雇用促進事業」の実施促進を通じて政府から支払われるべき資金の拠出を促すものである。衣服はツールのみではなく権利を主張するためにツールになる。また、Goonjは自らの組織を拡大するのではなくアイデアを広げ、全国で同じような試みが広がることを目標としている。

(6)インドの学校は年間180-200授業日だが女子は70日欠席する事例が多い。これは、生理用品がなかったり装着する場所がなかったりすることによる。女子生徒に生理用品を配る事業も行っているが、無料の慈善ではなく子供がきちんと出席する、きちんと制服を着用するという真面目な行動に対する「ご褒美」として提供している。学校支援では玩具の提供もある。これは学校内の遊び場に子供が遊ぶ玩具を提供するものである。

Gedc1556(7)衣料やその物品の輸送、保管など「ロジスティックス」にはコストがかかる。Goonjの全体の活動には年間で6000万ドル以上の費用がかかるが、50%は活動に賛同する個人の寄付金でまかなわれている。そのほかに、都市と農村の双方でボランティアなどの市民参加によって支えられている。キャッシュではなく廃物が通貨になる。キャッシュはロジスティックに使用する。これがパラレル・エコノミーである。社会リソースの限界を乗り越えノンイシューに光をあてることでパラレルニーズに対応する。Goonjは単に配布する組織ではない。市民が決定し行動し世の中を変えていく。政府もそれについてくる。おおきなポテンシャルがある活動である。

(8)最後に写真をみていただきたい。みなさんは裸の子供の写真を見て何を感じるだろうか。学校へ通っていない、飢餓、家族がいない。しかし、同じ子が衣服をきると同じような印象を持つだろうか。また、ぼろぼろの服を着ている人物の写真があるが、この写真からはなにか精神的にも問題あるような印象を受けるだろう。同じ人物がTシャツとジーンズを着るだけで印象が全く異なり、信用できるよな人物に見える。きちんとした衣服による「尊厳(dignity)」の回復とはこういうことである。

インドのNGO"Goonj" 人間の尊厳を目指したパラレルエコノミーの試み(1) 「ノンイシュー」

2012年のGDN世界開発賞のインドのNGO/社会企業家、グーンジ”Goonj”のアンシュ・グプタ(Anshu Gupta)氏をお迎えしての研究会を、JICA研究所(新地球ひろば)で39日に開催しました。グプタ氏は310日、11日に開催された東日本大震災関連のシンポジウムに出席するため来日し、9日にJICAの立ち寄る機会をつくっていただいたものです。

以下、グプタ氏のプレゼンテーションおよび質疑応答の概要をご報告します。

(1)まず、「気が付かれていない問題」(ノンイシュー)がいかに重要か話したい。ニューデリーの新空港には最先端のトイレがありどのように使っていいかもわからないほどである。一方では鉄道駅には満足なトイレも給水施設もないことが多い。これはインドのように急速に発展している国の抱える問題である。その中で問題として気が付かれていないノンイシューがある。その一つが衣服である。

Gedc1547(2)衣服は衣食住の生活三要素の一つであるが議論されることが少ない。また衣服に関してはさまざまな誤解がある。災害時の緊急支援に衣服が提供されることが多いが、衣服は一着目だけが不可欠であって、二着目は負担になる。それは、災害によって家が失われ保管場所がないからである。また、衣服の支援を受け取った場合、分類。整理に多くの人手が必要であり、他のやるべき仕事を圧迫してしまう。衣服に関しては地震や津波などの大災害以上に不適切な衣服で犠牲者が出ている悲劇がある。それはインドの冬の寒さである。インドの都市と農村では所得も健康状態も嗜好も体格も異なる。所得格差があるため農村あるいは近隣国の人がデリーなどの都市出てくるが、生活は厳しい。特にデリーは気候が厳しく夏は45度以上になる一方で冬は2度まで下がり、暖房施設もない。このため多くの人が行き倒れて凍死する。行き倒れた遺体を収容してリキシャ(オート三輪)で火葬場に運ぶビジネスがある。一回20ルピー。寒さが特に厳しかった1994-95の冬は毎晩10人ー12人が収容されていた。夏でも一人4-5はいる。このリキシャ業の家族とあるとき一週間一緒に過ごしたが、この人たちも満足な衣服がない。リキシャ業の子供は寒いときには遺体の間で寝ることもあると言っていた。このような深刻な状況になるのに深刻な社会問題とも認識されていない。まさにこれがノンイシューである。

(3)もう一つのノンイシューが女性の生理用品である。女性は誰でも一定年齢になれば生理用品が必要となる。インドでは多くの人が不要になった布きれから自分で作った不完全なナプキンを不十分な洗浄で使用し、生理のサイクルが異なる家族で共用したり、砂、灰、新聞紙、プラスチックバッグなどを代用品として使用したりするケースも多いが、不衛生のために命を落とす女性もいる。しかし社会的タブー等もありだれも語ろうとしない。7-8年前にグーグルで検索した時にはインドだけではなく世界中で探してもこの問題を議論している情報はなかった。

2013年3月 8日 (金)

独創的なインドのNGO活動"Goonj"

明日(3月9日)、JICA研究所(市ヶ谷・地球ひろば)にて、独創的な貧困層支援活動を展開し2012年6月のGDN年次会合で「国際開発賞」を受賞した、インドのNGO "Goonj"の代表、アンシュ・グプタ(Anshu Gupta)氏をお迎えして研究会を行います。ご参加希望の方はこのエントリーにコメントいただければ幸いです。

3月9日(土) 14:00-16:00
会場:JICA研究所(市ヶ谷・地球ひろば) JR市ヶ谷駅から徒歩15分

http://jica-ri.jica.go.jp/ja/about/access.html

Goonjの活動については昨年の9月に訪問する機会がありました。以下はその時の報告です。

Photo 衣食住は人間の基本的な要求ですが、食や住にくらべて「衣」が軽視 されているという認識がGoonjの出発点です。インドの北部は冬はかなり寒くなります。気温は0度あるいはそれ以下に下がる地域もあります。そして不十分な衣服のための凍死する例も後を絶たないのです。また、粗末な衣服は人間の尊厳を著しくおとしめてしまいます。

Photo_2Goonjは都市部の中間層、富裕層から不要になった衣服を集め、貧困層に提供しています。まず、提供された衣服からそのまま再利用できるものを選別します。わずかな補修で再利用できるのものは補修します。これらを貧困層向けに配布するのですが、無償で配布するのではなく、道路や橋の建設、水利、環境などのコミュニティーに必要なプロジェクトへの労働の対価として提供するのです。これは単に無償で配布するのでは、もらう側の尊厳を傷つけてしまうという考え方で、Goonjのが基本理念になっています。Cloth for Work (CFW) という活動です。無償の支援が依存を生み出したり、自立を妨げたりする例はよく見られます。

Photo_3再使用できない衣料のうち状態のよい綿布は、洗浄、消毒して生理用品に加工します。これをCFWを通じて配布するか5枚1セットを5ルピーで販売します。重要な点は人々の衛生観念を改めることで、健康を改善することです、6ヶ月程度の提供期間のあとは、人々が自分たちで生理用品を作成し継続的に使用するようになることを目標にしています。一度使えばその快適さ清潔さに気づく、ということです。

さらのそれ以外の使用できない衣料は、バッグや財布、敷き布、毛布などに加工します。都市部で大量に発生するジーンズの廃品はそのままで農村部に配布できないそうですが、それは都市と農村で体格が違うからだ、という説明を聞いたときには、あらためて格差の深刻さを考えました。

このほかにも、学用品のリサイクルや医薬品の配布にも取り組んでいます。事務で使用する紙は全部裏紙です。廃棄されるものをなくすことを目標に再利用、再生を行う、さらには市場で金銭で取引されろのではない別のサイクルで、人々の豊かな生活を目指すということが目標になっています。「もう使えない」と思うようなものが「使いたくなる」製品に変わる。この訪問で、元気をいただいた気分です。また、豊かさとはなにかをあらためて考えさせられました

2013年3月 3日 (日)

「ルワンダ大虐殺後の復興から未来へ」講演会・意見交換会 3月8日(金)

来る3月8日に、ルワンダとブルンジで義足の製作と配布、リハビリテーションや職業訓練に取り組んでいる「ムリンディ・ジャパン・ワンラブ・プロジェクト」のルダシングワ・ガテラさん、真美さんご夫妻をお迎えして、お話をお聞きしつつ、紛争後の途上国と私たちがどうかかわっていくかについてのディスカッションを行います。ぜひ、奮ってご参加ください。ルダシングワ(吉田)真美さんは大学の地元茅ヶ崎のご出身です。

日時:3月8日(金) 13:30-15:30

場所:文教大学湘南校舎1101教室

アクセス:小田急江ノ島線湘南台、JR東海道線茅ヶ崎駅よりバス20分です。
http://www.bunkyo.ac.jp/access/shonan.htm

事前予約等は不要です。

文教大学のWEBサイトもご参照ください。http://open.shonan.bunkyo.ac.jp/sysroom/?p=12324

2012_0323059ルダシングワさんの作業場は昨年訪問しました。どのような義足が必要かは人それぞれです。その人にあったサイズや機能にするためすべてオーダーメードです。安定した歩行を可能にするためにはある程度の重さも必要になってきます。まず、義足を必要とする方の足型を石膏でつくります。それにプラスチックの素材をかぶせて熱を加えて加工します。

2012_0323061


四肢を失うということは移動や作業の自由を制約されるという意味で「剥奪deprivation」です。義足で行動の自由を確保することは、大きなエンパワメントにつながります。ルダシングワさんご夫妻は社会復帰や職業訓練にも力を入れています。
人々の幸福を最大化するという公共政策の目標設定と実行は大変難しいですが、剥奪状態を解消し、人々の不幸を少しでも少なくすることに地道に取り組んでいくことがもっとも重要だと思います。

写真は2012年3月にキガリの作業所で撮影しました。

インフラは資産か負債か? プロジェクトライフのあと

中国東北部の産業遺産。 1983年の1月、吉林省の省都、吉林市の郊外25キロにある「豊満ダム」へ行きました。「満洲国」時代の1937年から工事が開始され、黒竜江(アムール川)の支流、松花江に巨大な多目的ダムを建設するという日本の技術によるプロジェクトでした。1945年8月15日までに完成には至らなかったようですが、発電は1942年に開始されています。ダム堤の長さ約1.1キロ、高さ90m、発電機設備容量は1000MW(100万Kw)という当時としては「東洋一」と言われた規模でした。戦後国内で建設され屈指の規模と言われた佐久間ダムがダム堤の長さ約290m、高さ155m、発電機設備容量...350MW(付属の揚水発電を除く)であることと比較すれば、その巨大さがわかります。

001079豊満ダムは、中華人民共和国が成立後も中国東北部に電力、農業用水を供給し、洪水防御の役割を果たしてきました。当時、日本人の技術者が1950年代までとどまって仕事を続けていたそうです。「留用」と言います。このダムの建設工事で「日本側によって多くの中国人が虐待され死に追いやられた」という「万人坑」説があるようですが、もしそうなら「留用」などありえなかったはずです。

この豊満ダムですが、数年前から話題になっています。それは完成後70年近くたち、そろそろ耐用限度に来ているということです。冬はマイナス30度、夏は40度近くになる寒暖の差が激しい場所で凍結による割れ目の拡大など劣化が進んでいるとのことです。中国政府は全面的な建て替えの方針のようですが、膨大な費用がかかると同時にそもそもどのような手順で建て替えるか、難しい問題があるようです。

どんなインフラ施設でも寿命があります。プロジェクトライフは30年から50年と想定しますが、撤去更新費用は通常はコストにカウントされませんし、カウントされたとしても現在価値割引法を使った費用便益計算では遠い将来の費用は過少に見積もられてしまいます。成長が永遠に続くという前提ではそれでもよかったのでしょう。しかし、現在、資源、環境のみならず、人口、貯蓄などすべての要素について、拡大や成長を前提にできない時代がそこまで迫ってきています。更新時期に建設時期と同様に容易に資金や技術が確保されるという保証はどこにもありません。インフレ見込みではすべての生産要素が均等に価格上昇すると想定しますが、それは単なる想定にすぎません。プロジェクトの費用や便益に関する考え方を根本的に見直さざるを得ないと思います。以前も書きましたが、これが縮小均衡過程のマネジメント(envelopment=developmentの反意語)を考えることの重要性です。では、現実的で実行可能な縮小均衡のマネジメントとはどのようなものか? これをこれからこのブログでも考えていきたいと思いますが、少なくともプロジェクトに関しては現在価値割引割引率を見直すとともに、100年~200年先の更新費用もカウントすべきでしょう。

2013年3月 2日 (土)

「開発」への旅

「開発」への旅・・・・・・ 富山市の近郊に「開発」という駅があります。「かいほつ」と読みます。0214

Developmentを「開発」と言うか「発展」と言うかの問題は授業でもよくとりあげます。元の develop という動詞を他動詞ととらえるか自動詞ととらえるかの問題です。外からの働きかけを重視するのか、内側からの力を重視するのかの違いです。政府開発援助(ODA)の関係者が「開発」を多用するのはある意味自然なことです。一方、内発性を重視して「内発的発展」という理論の展開もあります。

もうひとつ「開発」を「かいほつ」と考えようという考え方があります。内的な自覚や覚醒による変化を重視する考え方です。これは仏教思想に由来するそうです。

産業革命以降の「大転換」は基本的に資本、すなわち機械と化石燃料(エネルギー)の導入によって、所得の増大と資源制約の克服たらされたものと理解できます。しかし、そろそろ資源の絶対的な限界が見えてきました。シェールガスの開発という話題もありますが、最大3~400年単位でのカンフル剤に過ぎず、数千年の人類の歴史から見れば短期間です。現在、世界のシステムは「拡大均衡」を前提としています。しかし、これに先が見えてきた現在、現実的な解決方法を考えなければならない時期に来ています。私の研究室の院生が、持続可能な発展にありかたを考える修士論文を書きました。ラオスの教育を論じていますが、「かいほつ」のアプローチが一つのキーワードです。

ところで、この開発(かいほつ)駅ですが、どうやらそのような深い意味はなさそうです。近世の新田開発に由来し、このほかにも富山県内で「開発」という地名を見つけました。かっては「開発」を「かいほつ」と読むのが普通だったようです。現代語に置き換えれば「かいはつ」駅のほうが事実に則しているのかも知れません。

ブログ再開します

しばらくブログをお休みしていました。フェイスブックに書き込むことが多くなったことと、開発に関する根本的な問いかけを初めてしまったことがその理由です。さらに、昨年秋に入院したこともありました。

これから順次、ブログを更新していきたいと思います。しばらくはフェイスブックの話題と共通するものをアップしていくことになると思いますがご了承いただければ幸いです。

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