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2012年1月

2012年1月 6日 (金)

新年のご挨拶と本のご紹介

あけましておめでとうございます。

昨年は私も被災地支援に携わり、このブログも震災のテーマ一色になってしまいました。今年も、また支援活動を続けていきますが、今年こそ復興へ向かって本格的に歩み出す一年にしたいと思います。また、これまでの経験から、災害復興の経験から途上国への開発協力に応用できる知識を整理し共有することにも取り組んでいきます。

Economic_and_policy_lessons さて、新年早々、(恥ずかしながら)共著書の宣伝をしたしたいと思います。このたび、“Economic and Policy Lessons from Japan to Developing Countries ”という本がイギリスのパルグレイブ・マクミラン社から発行されました。これは国際開発学会20周年記念事業の一環として企画され、豊田利久先生(神戸大学名誉教授・国際開発学会前会長)、西川潤先生(早稲田大学名誉教授)、佐藤寛先生(アジア経済研究所・国際開発学会現会長)の3名の先生方の編集によるものです。総勢15名の執筆陣の末席に私も加わりました。

この本は、日本の開発経験を今日の途上国の開発に何らかの形で活かせる形で発信したい、という目的意識のもとに、マクロ政策、産業政策、国土開発、農村開発、教育、公衆衛生などの分野における日本の開発経験をまとめたものです。日本はかなり貧しい途上国から先進国へ発展してきた経験を有しているところが、他の先進国とは異なるユニークな点です。しかし、途上国としての経験の記憶は遠い昔の話になりつつあり、また当時を知る人々の数も少なくなりつつあります。今、この時点で、日本の経験をまとめておくことは、世界的な知識の共有という点で大変意義があると思います。

私が担当したのは対外援助の部分(第11章 "Integration of Global Concern into ODA" で、戦後の賠償から日本の対外援助、国際協力がどのように発展してきたかということを、大きな国際関係の枠組みの中で論じています。題名が示すように、ODA政策を、単に国益追求の手段としてではなく、国際社会の一員として「公共財」としての援助を提供するという方向へどのように舵を切ってきたのか、あるいは十分に舵をきることができなかったとすればそれはなぜか、というのが私の論じた点です。日本の場合には、「国民国家」としてのフレームに制約されることが欧米ドナー(援助国)より多いことを、歴史的経緯も含めて指摘していますが、結論としては、グローバルなアジェンダ・課題をどんどん取り込み、援助協調や対外政策の一貫性の確保に取り組んで行かなければならないことを強調しました。これは、中国やインド、タイなどの新興ドナーへ向けたメッセージとしても意識しています。昨年暮れに、韓国の釜山で開催された援助効果向上のためのハイレベル・フォーラムでは、これら新興ドナーも伝統的なドナーとともにより有効な援助のために協力する方向が確認に向かうことが確認されました。よい方向へ向かっていると思います。

政府開発援助(Official Development Assistance)という国際的に定義が決められている用語が、国家の機能・役割を前提に置いていることからも明らかなように、17世紀に形成された主権国家、19世紀以降成立してきた国民国家、これらの国際社会の枠組みの中で、開発援助・国際協力は実施されてきました。現在では、国境を超えたヒト、モノ、カネ、情報の動きが世界を動かすようになり、ODAも時代遅れになっていると指摘されることもありますが、一方で、ユーロをめぐる現在の混乱を見ればわかるように、一国の主権や国民としての意識を乗り越えることは依然として容易ではありません。この緊張はしばらく続くでしょう。10年前に現在の世界が予測できなかったのと同様に10年後の世界を予測することは困難ですが、何がグローバルな課題で、その問題解決のためには、具体的に、どのようなリソースをどのように活用していくのか、実践的な処方箋が求められています。理念や理想も重要ですが、それだけでは何も解決できません。「言い放しの言説」ではない、具体的な政策提言をこのブログでも模索していきたいと思います

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