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2011年12月13日 (火)

被災地のインフラの復興 企業の役割と政府の機能

Dsc_0080 4月以来、何回も現地に赴く中で、いくつか気になっていることがありますが、その一つがインフラ、特に鉄道の復興です。三陸沿岸の被災した大部分の区間、特にJR線はまだ一部を除き本格的な復旧作業に着手されていませんし、復興に向けた意思も見えてきません。。一方、第3セクター企業として地元の自治体や企業が出資する三陸鉄道からは復興へ向けた意欲と熱意が伝わってきます。

Dsc_0030 11月19日、20日の両日、盛岡市で開催された日本評価学会に出席しましたが、この機会を利用して、岩手県の三陸沿岸に行ってきました。時間が半日しか取れなかったので、具体的な支援活動に参加はできませんでしたが、部分的に営業を再開している三陸鉄道に往復乗車することで何がしかの支援することとしました。早朝の新幹線で東京駅を出発して盛岡に約2時間半で到着しましたが、ここで、山田線の11時過ぎの快速列車を待ちます。実は、11時過ぎのこの列車が、盛岡から宮古に向かう始発列車なのです。宮古は岩手県の三陸沿岸では陸前高田、大船渡、釜石と並ぶ主要都市の一つですが、県庁所在地の盛岡と結ぶ山田線の列車は一日4本しかありません。盛岡と宮古間は並行する国道106号線のバスが、一時間に一本以上運行されており、主要な交通機関になっています。対する山田線は、バスと比べて所要時間でほとんど差はなく、運賃はむしろ安いくらいなのですが、まったく競争になっていません。「やる気がない」と言われても仕方がない状況です。実はここに、地方の交通を維持するための現行制度の根本的な問題があると思います。

山田線、あるいは今運休している被災地の線の多くはJR東日本線です。JR東日本はいうまでもなく株式が全額公開されている民間会社で、株式会社である以上、株主利益を図らなければなりません。「駅ナカ」など最近のJR東日本のビジネスは目を見張るものもあり、黒字を続け、配当も順調です。しかし、高収益が見込めない、あるいは赤字にもかかわらず社会的要請で継続せざるを得ないローカル線がお荷物であることに疑いはありません。「できれば廃止したい」というのが本音でしょう。それは、JR東日本の経営方針の是非の問題ではなく、民間会社の内部補助で地方の交通を維持しようとした「国鉄民営化」の制度設計の問題です。

Dsc_0060 閑散とした(そのために空いていて快適な)山田線で約100キロ2時間、宮古に着いて三陸鉄道に乗り換えると、まず活気が違います。一両で運行されている列車ですが、高校生で席の8割は埋まっています。車両は「復興支援列車」と表示されて、全国からのさまざまなメッセージが掲示されています。岩泉町の小本まで約40分の乗車です。途中、田老を通りました。田老は、「万里の長城」と称された巨大な堤防を乗り越えて津波が襲い、街は壊滅しました。その田老の駅でも乗降が結構ありました。被災地の光景どこも同じかもしれませんが、鉄道が動いているという事実が人々の希望に与える効果は大きいと思います。

Dsc_0076 JR線と三陸鉄道の違いは、まず地元の出資があるかどうか、そのオーナーシップの問題です。学会で岩手県の復興担当の方ともお話をする機会がありましたが、JR線に関しては、県としても資本関係がないので関与できない嘆息されていました。三陸鉄道の復興については、第三次補正予算で復興に不可欠な交通機関ということで予算の手当がなされました。一方、JR線については「黒字会社なのだから自社で手当せよ」ということで、予算手当は今のところなされていません。被災地の鉄道の復興に、これだけの差が出てくるのは不合理と言わざるを得ません。

被災地の鉄道復興については、対立する二つの意見があります。ひとつは「日本の中枢崩壊」「官僚の責任」などの著者、古賀政明氏の意見で、鉄道とバスに資源を分散させず、鉄道は思い切って廃止してバスに一本化せよというものです。これに対し、原武史氏は「震災と鉄道」の中で、鉄道や鉄道駅がまちづくり、今後の復興に与える効果を考え、人々に希望を提供する意味でも鉄道での復興を強く主張しています。私は基本的にどちらも正しいと思います。公共交通の維持が、「穴のあいたバケツ(fiscal  drain) 」であってはいけないと思います。一方、原氏の主張するような鉄道の持つ多面的な役割や人々の心理への影響を考えれば、簡単に鉄道切り捨てを主張する考えにも賛同できません。

P3090073 最近、JRから一つの提案がなされています。それは、被災した鉄道線路をとりあえずバス専用道路として整備してバスを走らせるというものです。もちろん、これはJR東日本による巧妙な鉄道廃止作戦と見ることもできますが、この方式には大きな利点があると思います。線路復旧の場合には高台移転など都市計画の決定を待たないと線路の移設等が決められず、時間がかかり、その間に公共交通そのものが衰退してしまうリスクがあります。一方、バスを線路上で運行すれば、暫定的ルートでもコストを最小限に抑えられれ、早期に復旧が可能です。将来、都市計画が定まり、ある程度の輸送量が確保できる見通しがつけば、その時点で鉄道としての復興を考えればいいのです。実は、この方式は福島県の白河と棚倉をむずぶ路線(白棚線)で前例があります。ただ白棚線では鉄道廃止後のバス路線と市街地の発展が必ずしもマッチしておらず、この方式の利点が生かされていないと思います。

鉄道は駅で成り立っています。また、市街地は駅を中核として発展してきました。重要なことは、まちづくりとその中で公共交通をどのように町の核および地域の骨格として生かしていくかであって、それがレールの上を走るかどうかは次の課題でしょう。さらにより本質的なことは、地方の公共輸送維持を民間会社の内部補助に任せるべきかどうかを問い直すことだと思います。今や、地方のバスはほとんどが公的な助成を受けて運行されています。線路上をバスが運行することになれば、周辺のバス路線との調整も必要になります。地方の交通機関は基礎的なインフラであり、政府(公共政策)の役割である、ということを再確認、再定義することが急務になって来ています。

<写真>

(1)田老の街。巨大堤防は津波を防ぎきれませんでした。

(2)山田線 原武史氏の著書でも、観光資源としての活用が提唱されている、景色の良いルートです。

(3)三陸鉄道 復興支援列車

(4)同上

(5)福島県の白棚線。鉄道を廃止したあと専用バス道にして公共交通を維持しましたが、現在では専用道の区間は少なくなり、町外れを走る「ただのバス」化が進んでいます。都市計画や都市政策といかにリンクさせるかが、この方式の課題です(2004年3月撮影)。

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コメント

こんにちは。国際理解論を受講しています。
三陸鉄道が復興へ向けた意欲と熱意があることは非常に大きな一歩だと思います。
津波の被害を受けた沿岸部には多くの鉄道路線があると思います。
その被害を受けた路線をどうすべきかということで、私はバス専用道路として整備し将来、都市計画が定まってから鉄道の復興を考えればいいと思ってしまいます。しかし、鉄道がJRであったら都市計画が定まっても鉄道の復興を考えない可能性が高いと思います。それを考えると現実的にはとても難しい問題だと思います。しかし、林先生がおっしゃっているように市街地が駅を中心に発展し街の活性化につながることを考えると鉄道の駅というのは非常に大きな役割を果たしているのだと感じました。
また、公共輸送維は民間会社の助成に任せるのではなく政府がしっかりと公共政策であるということを再確認することが重要だと思います。そのためにも国民一人ひとりが被災地の復興をしようとする気持ちが大切になってくると思います。

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