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2011年11月

2011年11月14日 (月)

物資の支援を考える

以前、学生ボランティアの指導をしながら東ティモールの孤児院や学校への支援をしていたときのことですが、学生ボランティアとしては一般的に行われている学用品や物資の支援に多くの問題があることが気になっていました。学生たちが出身の中学校や高校に呼びかけて学用品や縦笛、ピアニカなどの楽器を集めて、それを超過料金を支払って手荷物で持っていくのですが、これらの支援物資が有効に使われていたことを検証することはできませんでした。楽器はそもそも音楽の授業の中でそれを活用する仕組みがなく、短期のボランティアでは指導する体制も取れないことから、ただの「騒音源」になってしまったようです。翌年行ったときには使われずに箱に詰められていました。その他にも、世界各地のボランティア団体から支援物資が届いていましたが、使われずに倉庫のスペースを占領しているものもかなりありました。

Dsc_0602 一般に物資支援の問題は、ニーズとのミスマッチの問題とともに、現地産業に与える影響も指摘されます。アフリカでは主にヨーロッパから古着の支援などが届きますが、かなり多くの部分がマーケットで売られています。もし援助された古着がさしあたって必要なものでなければ、換金してより必要なものを購入しようとするのは、極めて合理的な行動です。しかし、東ティモールにおける古着の転売、換金に関しこのことを指摘し「転売されてもやむを得ない」としたところ、「支援者の善意をなんと考えているのか」という批判を受けました。このようなこともあってか、私は大学のボランティア指導者を2年足らずで「解任」されてしまいました。支援には熱意や善意だけではなく冷静な観察、分析も必要です。この場合、より重要なことは、このような個々の合理的行動の結果として全体に及ぼす効果、たとえば古着のマーケットの存在が、国内の縫製などの繊維産業に及ぼす影響です。アフリカでは支援物資が国内の繊維産業やその他の産業の発展を妨げ、結果として人々の貧困からの脱出にマイナスになっていいます。

Gedc0081 支援物資のもたらす問題は、現在、東日本大震災の被災地でも起こりつつあります。先週、6回目の支援活動に行ってきましたが、今回は支援物資の配布が主なミッションでした。石巻市北上町に届けられた1000箱近い衣料の支援物資を冬物を中心に住民に配布するというものです。中学校の体育館に、衣料を女性用、子供用、男性用などと分類し並べ、住民に好きなものを持っていってもらうというイベントです。これまでも支援物資の整理には行政は多くの労力を費やしてきました。支援物資の中かには、古着をダンボールに無造作に詰め込んで送り込んできたものも沢山あります。

支援が無駄だというのではありません。体育館に隣接して仮設住宅があることから。開始前から長蛇の列が出来ていました。開始すると、新品の肌着や状態がよく新品に近い冬物の衣類は飛ぶように出ていきます。衣料の支援が役にたっていることは事実です。一方で、1000箱におよぶ膨大な衣料、それもほとんどは古着の支援物資をすべてさばくことはできません。もう一度このようなイベントを行うそうですが、それでも配りきれなかった衣料をどう保管・処分するかは頭の痛い問題です。保管するにも処分するにも費用が掛かります。岩手県では賞味期限切れの食品や古い衣料などを焼却処分する方針を出したところ「支援者の善意をないがしろにする」とマスコミから叩かれてしまいました(岩手日報 10月30日)

Dsc_0615 今回、石巻の復興支援協議会の会合にもオブザーバーで参加することができました。そこでも支援物資への対処が議題になりました。石巻では支援物資をプールして、協議会に参加するメンバーが必要に応じて利用できる方法が取られてきました。現在の問題は、支援物資の配布は終了すべき時期に来ている、しかし一方でまだ大量の物資が残っているということです。物資は県全体で19万箱におよび、倉庫料は毎月数千万円にのぼっているという状況です。それだけの金額で、もし支援するのであれば新品の衣料を購入して配布したほうが効果的であり喜ばれることはあきらかです。もうひとつの議論は、支援物資を配り続けることによって、ようやく復興しかけている地元の商店など、経済に及ぼす悪影響です。あるシニアのボランティアの方が「市場経済で通じての復興が本来のあり方ではないか。ボランティアが場合によってはこれを妨げることになることを認識しなければいけない」と主張していましたが、まさにその通りです。

Dsc_0650 多くの方が「自宅で使われなくなっているものがある。捨てるくらいだったら活用してください」という気持ちだと思います。しかし、このような善意の支援には、整理、保管や廃棄というコストがかかります。今のところ、このようなコストまで負担する仕組みはありません。全国から無秩序に押し寄せる支援物資に伴う負担を「第二の災害」とする見方もあるようです。 支援物資で被災者が大いに助かることがありますのでその意義は大きいですが、必要なものが必要なところに提供され、その管理のコストが最小限となる方法を、社会的に議論して構築していくべきだと思います。まずは、支援物資のもたらす問題点について社会全体の共通認識とすることが第一歩です。イノベーションとしてインターネットを利用したマッチングの方法(管理費用を送り主の負担とする)なども考えられます。

「自分がしてもらいたいことを人にもしてあげなさい Do unto others as you would have them unto you 」という言葉が援助の"Golden Rule"として唱導され、なんと国連本部にまでその額がかかっているそうです。この"Golden Rule"が妥当とされるのはには次の二つの条件が見たされる場合に限ります;
(a)支援等の介入のもたらすポジティブ、ネガティブ両面の効果やインパクトについて十分な検証がなされていること。過去の支援について十分な客観的な評価が行われていること、
(b)支援しようとする人々と、今何が必要か、共に考えること。
この二つの条件が満たされないと、善意を押し付けたり、あるいはかって多くの国際機関が批判されていたようにひとつの支援メニューですべて対応しようとしたりする独善的な支援になる危険性が大きいと思います。

<写真>

(1)北上川を渡る国道398号線 新北上大橋。津波で北側の北上町寄りの部分が流されましたが、ようやく仮橋で復旧しました。画面左側が大川小学校の方向です。

(2)北上町の配布会準備作業。1000個のダンボール箱との格闘でした。

(3)石巻市北上町支所。ここでも多くの方が犠牲になりました。

(4)南三陸町(志津川)の防災庁舎。周囲のガレキは片付きつつありますが、町の復興にはまだ手がついていない状況です。

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