« 2010年1月 | トップページ | 2010年4月 »

2010年3月

2010年3月31日 (水)

「立ちすくむ欧州」GDNフォローアップ

GDNについては1月に3回ほど報告しましたが、続報が続かなくてすいません。実はJICAのサイトにあるオフィシャルページに全体がすでにアップされていますので、こちらをご参照ください。

なお、文教大学国際学部のサイトでも紹介してもらえました。

さて、GDNはもう2カ月前になりますが、この間、ギリシャに端を発したユーロ圏の危機が世界を騒がせています。GDNはこの顕在化の直前に開催されていたわけですが、もし現在であれば「欧州統合」の議論はもっと異なった展開になったでしょう。

GDNのプレナリーの一つで、資本主義の多様性というセッションがありました。要するに中国やインドなどの経済発展を「異質の資本主義」として理解して、これとどのように向き合っていくかというテーマです。このようなテーマ設定自体が現在の欧州の「危機意識」を反映していると思います。これまで2世紀以上、世界を主導してきた欧州が、いよいよその近代社会のモデルを提供する立場から引きずりおろされるという意識です。20世紀の前半にもシュペングラーの「西欧の没落」などの議論がありましたが、それはあくまで米国などの欧州の血脈を引き継ぐか、日本のように欧州をモデルに近代化を進めている地域との関係の「相対的没落」にすぎなかったと思います。しかし、中国やインドの経済発展はまさに「別世界」からの挑戦にうつるのでしょう。

これに加えて、中国のグーグル問題、豪リオ・ティント社の上海での訴追問題、さらには人民元の為替レートなど、「中国異質論」の火に油を注ぐ話題に事欠きません。なぜ、ここまで中国政府が強硬姿勢をとるのか理解に苦しみますが、それ以上に、世界が一気に中国に関して関与政策(engagement)から封じ込め(containment)に転換しつつあるのではないかと思います。

このGDNセッションでは「ワシントン・コンセンサス」に対して「北京コンセンサス」という新語(?)が飛び出していました。この北京コンセンサスの中身ですが、「ワシントン・コンセンサスの市場重視に対して、政府の市場への選択的介入による経済成長と人的資源の重視を言うのだ」と新語を使った発表者は説明していました。 実は、これは90年代に、日本型資本主義として言われていたこととほぼ同じことなのです。

欧州がもつ「アジア中国拡大」への不安、恐怖は「フン族」や「蒙古」以来と思いますが、、日本にとって要注意なのは、アジアの外から見れば、日本も中国も、あまり区別されていないのではないかということです。日本人もオランダと英国をどこがどのように違うのか言うのは難しいのと同じことです。日常でも、もう10年以上前から、海外旅行で中国人と間違われることが多くなりました。

最近、トヨタ問題や、捕鯨、マグロなどで「日本たたき」が行われていると感じる向きもあるかもしれませんが、これは中国に代表される東アジア全体に対する欧州が感じる脅威を反映しているのかもしれません。

日本は明治以来、福沢諭吉に代表される「脱亜入欧」と鳩山首相が主張しているアジア共同体構想に代表される「アジア主義」の二つがあり、その間を揺れてきました。あらためて、日本の立ち位置が問われていると考えることもできます。

2010年3月30日 (火)

ケニアとタンザニア(アイデンティティ・ポリティクス)

ケニアではキクユ族、ルオ族などの部族間対立が解けず、2007年の選挙で部族間の流血の事態に発展してしまったことは記憶に新しいところです。「ケニア人」という国民意識が十分に確立しておらず、政治家が国民全体の代表ではなく部族の代表として行動してしまうところが最大の問題です。

これに対し、タンザニアでは「タンザニア国民」という意識が確立しており、部族対立も目立たず、キリスト教とイスラム教の宗教対立も顕著ではありません。これは、ニエレレ大統領の時代の政策の一つの成果と評価することができます。特に、スワヒリ語を国語として、部族語の上位において、(強制的な)普及をすすめたことの効果は大きかったと思われます。

ポール・コリアー教授(Oxford大学)の"WARS, GUNS AND VOTES" (邦訳:「民主主義がアフリカ経済を殺す 最底辺の10億人の国で起きている真実 」)は、途上国で選挙を実施することの問題点を鋭く分析しています。ケニアのような「国民の形成が進んでいない」状況で選挙を実施すると、各部族のアイデンティ・ポリティクスが選挙を通じて展開される状況になり、いかなる選挙結果も国民全体としてその正統性を認識されず、かえって不安定化を招いてしまうという分析です。言い換えれば、選挙の実施を、国内安定やグッドガバナンス確立の指標とすべきではないということです。

コリアー教授は貧困国におけるアイデンティティ・ポリティクスが必然であることも指摘します。アイデンティティ・ポリティクスの本質は保険機能です。貧しい国や地域では、人々は助けあって生きていかなければならず、特に余剰の少ない、あるいはほとんどない場合、困難に陥った人を集団でサポートする機能は極めて重要です。しかし、必ず「困ったときだけ助けを求めて、困っていないときには他人を助けようとはしない」人が出てきます。これは公共財のフリーライダー問題と同じです。

このような行動を抑制するためには、「保険グループ」に入ったメンバーに対しては、その集団に全面的に帰属して日常的にさまざまな負担をすることを強制させなければなりません。このため、集団には極めて強い「排除」の力が働くことになります。その集団に100%のコミットメントしなければ保険機能を受けられないという、「村八分」のメカニズムです。

言い換えれば、貧しいところでは、どこかの集団に帰属しなければ生きていけないということであり、自分の所属する集団の立場を少しでも強くするアイデンティティ・ポリティクスが普遍化します。先進国でこの種のアイデンティティ・ポリティクスが強くないのは、個人で保険に加入ができ、安全、医療、教育などの公共財を政府がきちんと提供しているので、集団に帰属していかなくても生きていけるからです。

このテーマは、春学期の「アフリカ地域研究」、「国際関係論(平和学)」で取り上げてみたいと思います。

ダルエスサラームの街角で

Simgp2742_2 タンザニアというとあまり身近に感じられないかもしれませんが、実はこんな形で日本とつながりがあります。

タンザニアには日本と同じ左側通行ということもあって、日本の中古車であふれています。このバスは、神奈川中央交通のカラーのまま、ダルエスサラームの市内で活躍しています。このほかにも「○○幼稚園」「○○旅館」と書かれたままのマイクロバスを町中で見かけます。乗用車にいたっては90%以上が日本の中古車かもしれません。まるで、日本の街みたいです。

タンザニア報告(5)

今回災害に遭われたかたのお話を聞きました

(1)Sさん 59歳 男性
職業は大工。住宅と作業場、道具のすべてを失った。現在はキャンプに住んでいるが、キャンプは5月末で閉鎖と聞いている。ただ、状況が悪いので12月まで延長される可能性がある。食糧は現在キャンプで国連の支援を受けている。職業を再開したり、家を再建したりする目処はない。職場、家屋の復興には1000万タンザニアシリング(約100万円)くらいかかるかもしれない。、現在は、家具などの修理など、パートタイム的な作業で食いつないでいる。

(2)Eさん 60歳 女性
家屋が被害を受けたほか、収穫前の作物を喪失した。現在は臨時雇用で食いつないでいる。来季の耕作は可能であるが、耕作地の復旧に40万シリング(4万円)、種子の購入に20万シリング(2万円)ほどかかる。(注:貧困ラインが年収3~4万円なので、これでも大金)。

(3)LYさん 75歳 女性
寡婦で、子供も既に死亡し5人の孫を育てている。夫が家を残してくれたが、それを失ってしまった。孫たちとともにキャンプで起居している。食糧は現在援助を受けているが、援助が修了したら食べていけない。孫たちにはぜひ学校に行かせたいが、教育費をどうしたらよいのか? 制服が必要だが、支給されるのではなく買わなければならない。

(4)LAさん 80歳 女性
寡婦でしかも高齢。状況はLYさんと全く同じで、孫は6人いる。本人はまったく収入の道がない。

(5)Gさん  52歳 男性
家屋と家畜4頭(価値3百万シリング)を失った。家屋の再建には5百万シリング(約50万円)かかる。また家畜は2頭で再開するとしyても、一頭50万シリング(5万円)、妊娠している雌だと100万シリング(10万円)かかる。

以上はヒアリングベースで、今後、きちんとしたデータを集めたいと思っていますが、一旦災害にあうと生活再建がいかに大変かがわかると思います。開発途上国では、災害や病気などのリスクを個人的に対処するには容易ではありません。公共政策として何をすればいいにか、その公共政策も財源が限れられています。ここは、考えなければならない問題です。

写真は被害者向けのキャンプです。期限は5月末までとなっているようですが・・・
Simgp2646

タンザニア報告(4)

Simgp2716

このキロサでは昨年12月に水害の被害を受けました。この災害についてもご報告します。ますは、被害にあわれた方々への支援にご協力いただいた皆様方、どうもありがとうございました。

水害は昨年に12月26日に発生しました。大雨が約200キロ上のドドマ地区で降り、増水した川が当地で氾濫したというものです。キロサでは1960年に砂防ダムが建設され、本来ならばここにたまった土砂を適切に取り除くことにより河道の狭窄化を防止し排水能力を強化するはずだったのですが、土砂の除去が適切に行われず、排水能力が極端に小さくなっていたところに大水が押し寄せたという災害です。水が住宅地の中を流れたために、そこに新しい河道がいくつもできてしまい、大雨が降れば氾濫原になってしまう状況です。このために、今は立ち入り禁止地域になっており、住民は基本的に居住できず、国連の支援で作られたキャンプで暮らしています。キャンプでのテント暮らしに耐えられずに、危険を承知で戻ってきて、泥を取り除いて住んでいる人も出てきています。

その国連の支援ですが、現在、人員も入ってきていますが、国連の支援はあくまで緊急人道支援です。家を失った人々に雨風をよける「シェルター」を提供することは極めて重要で、国連の役割は重要ですが、国連の役割には「生活再建」は入っていません。「ホテル・ルワンダ」という映画で、国連PKOのリーダーが、目の前で虐殺が行われているのを見ながら「国連はpeace keeperではあるがpeace maker ではない」とつぶやく場面がありましたが、これを思い出しました。

行政は新たな居住地を用意するということでがんばっていますが、家の再建、職業の再建までは面倒を見てくれません。豊かな国、日本のようなところであれば、保険があり、個人や家計も貯蓄があります。地方自治体や国も、再建資金を長期、低利の融資で貸し付けることがでいます。しかし、タンザニアにような貧しいところでは、このようなメカニズムがありません。人々の災害に対する脆弱性の根本的原因は「貧困」です。長期的な政策としては貧困の削減を少しでも進めていくということしかありません。タンザニアは援助協調が進んでいるところです。しかし、研究室の調査を通じてわかったことでも、国連や国際機関、先進国の援助機関が、この村の貧困問題に目配りして支援の手が届いているとは必ずしも言えない状況です。それは多分他の村にも同様だと思います。

研究室ではキロサ村の定点調査を行いながら、地元の声が開発行政や援助機関に届くつなぎ役をやっていきたいと思います。

2010年3月29日 (月)

タンザニア報告(3)

Simgp2664

四駆を乗り捨ててあとは山道を歩きます。このあと村民とワークショップを行いました(写真は個人情報の問題があるので省略します)。村人が話してくれたことをまとめると以下の通りです。

(1)一番大きな困難は交通が不便なことである。村の中心まで山道を徒歩で2時間かかる。子供たちも片道2時間をかけて学校に通っている。

(2)収穫物を自ら市場に持っていく手段を持たないので、集荷に来る業者に言い値で売らなければならない。交渉力は極めて弱く、これが低収入に原因の一つと考えている。

(3)農民が購入したち考える生産財の第一は耕運機である。運搬手段が確保され自ら市場で販売できるほか、耕作面積の拡大もできる(手作業では1人1エーカーが限界)。もちろん資金がないのですぐに購入することはできない。

(4)資金不足のためよい種子が手に入らないことも、低い生産性→低所得の原因になっている。

(6)質問票調査でもっとも多かった困難は「金融サービスへのアクセスがない」であったが、実際にインフォーマルな金融を含めて利用している村民はほとんどいない。このことは一面、債務負担による生活崩壊を防いでいる一面も見逃せない。

(7)電気が通じていない集落であるが、約3割の村民が携帯を保有していると回答しているが、上記(2)のような状況であるので、携帯電話で市場の情報を農民は活用しているというような「言説」は少なくとも調査した集落にはあてはまらない。

(8)政府の支援政策や普及サービスについてはほぼ全員がその存在すらしらないと答えている。

以上が、「現実」としての農村貧困の一つの姿だと思います。引き続き、フォローを行っていきたいと思います。

タンザニア報告(2)

Simgp2660一つの集落はキロサ県の中心地から未舗装の道路を1時間ほど走り、さらに山中の道を徒歩で2時間ほど入っていったところです。時間の関係でとにかく、入れるところまで四駆で入りました。

タンザニア報告(1)

Simgp2638_2  3月21日から28日までタンザニアに滞在しました。一昨年から、「定点観測」を続けているキロサに今年も行き、現地の方と話をしてきました。昨年、データ調査を行いましたので、その結果を説明しつつ、再確認することも目的の一つです。

« 2010年1月 | トップページ | 2010年4月 »

最近のトラックバック

2016年9月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
無料ブログはココログ

Twitter