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2010年1月

2010年1月18日 (月)

GDNプラハ会合(3)ギデンズ教授「気候変動の政治学」

GDN会合全体の目玉は、初日夕食会でのLSEのアンソニー・ギデンズ(Anthony Giddens)教授による「気候変動の政治学(Politics of Climate Change)」をテーマとした講演です。ギデンズ教授は周知のように「第三の道」の著者で、市場と政府の二分論ではない社会・経済のあり方を唱えています。要旨は以下の通りです。

<要旨>
気候変動は深刻さは、もしそれが起こってしまた場合にはその結果が何百年も継続してまう一種の不可逆な事象であり、現在はそれがいつ生じるかまさに瀬戸際の状況にある。

気候変動をめぐっては(1)米国の共和党保守派などによって代表される「懐疑論」(skeptics)、(2)IPCCに代表される気候変動を深刻視し早急な対策が必要と唱えるグループ、(3)IPCCの認識は生ぬるく、気候変動の脅威は目前に迫っていると説く「ラジカル」なグループなどの立場の違いがあり、収斂していない。「ラジカル」によれば、今後、シベリアの永久凍土が溶け、大量のメタンが大気中に放出された場合の温暖化効果は計り知れないと指摘している。

先月開催されたCOP15コペンハーゲン会合は失敗だったといってよいだろう。1月31日までに2020年までの削減目標が発表されることになっており、これを注視したい、先進国と途上国の溝は大きい。COPのような多国間交渉に加えて、主要排出国の間の個別交渉も必要である。まずは、米国、中国などの6大排出国の交渉によってまず目標について合意すべきである。

目標が設定された場合、その次に重要なのは、それをどのように達成するかという方法論である。目標年限(2020)までに、確実に温暖化ガスを削減するための有効な計画・政策を示す必要がある。この分野は多くの主体の間の政治的交渉を必要とし、劇的な経済的、社会的変化をもたらす困難な課題となる。経済成長は一定のレベルに達すれば、それ以上は個人的。社会的福祉の指標にはならないことはあきらかで、経済成長という自体を見直していかなければならないだろう。

これらに向けた政策には規制と市場を組み合わせていかなければならない。金融分野でもあきらかなように、有効な規制がない状態は多くの問題を引き起こす。有効な規制が必要であるが、一方で規制は万能ではなく、市場メカニズムも十分に活用する必要がある、市場的方法の中では、気候変動に対応するリスク軽減措置としての、市場のリスク判断、すなわち民間保険制度の活用を考えていくべきである。また、ハリケーンなどの被害に対応する災害基金(Catastrophe Bond)や適応(adaptation)に向けた投資とリスク・アセスメントを組み合わせていくことができる。

政治家がリーダーシップを発揮することも重要である。米国では懐疑論が急速に増え、アル・ゴアの時代に50%以上あった温暖化対策を支持する意見は現在6%にまで減少している。気候変動問題に関する世論の両極化は深刻である。米国では気候変動問題は医療保険などともにパッケージとして、共和党など保守派のオバマ政権への批判材料になっている。これはオバマ政権がはっきりとした政策目標を打ち出していないことにもよるだろう。

気候変動を議論するときに、現在ではその費用が主に議論されているが、便益も示していくことが必要である。たとえば、化石燃料の使用を減少させることは、長期的にはエネルギー供給の持続性を高めることができる。政治家はこのようなメリットを示すことによって気候変動対策への支持を増やすことができる。明るい未来志向でなければ人々はついてこない。キング牧師の「私には夢がある(I have a dream)」は訴える力を持っていたが、もし「私には破滅がある(I have a catastrophe)」と言ったら誰も見向きはしなかっただろう。

気候変動対策には、最新の技術(ハイテク)と伝統的な技術を組み合わせていくことが有効である。たとえばインドの村落では昔から地域の資源を保全しながら活用する知恵で何千年も持続可能な生活をしてきた。このような知恵を破壊するような開発を行ってはならない。政策を立案する場合、ユートピア思想ではうまくいかない。現実の政治を認識して、現実的なアクションを積み重ねていく必要がある。

<要旨終わり>

ギデンズ教授の講演は、「リアル・ポリティクス」によって気候変動対策を進めていくべきとするもので、市場の規制が必要であること、政治的リーダーシップが必要であることに重点が置かれていました。市場と規制の二分論ではないことは「第三の道」の流れです。また、経済成長に代わる目標が必要であることについても示唆がなされていましたが、この部分については、具体的な方法論の言及がなかったのがちょっと残念でした。教授によれば今回の講演のベースになった著書”Politcs of Cimate Change” が近日中に出版されるとのことですので、これに期待したいと思います。

GDNプラハ会合(2)全体概要

GDNは1999年に第1回会合がドイツのボンで開かれてから10年、今年で11回目になります。「調査研究と政策の橋渡し」を目標にして、開発途上国・市場経済移行国で質の高い調査研究とそれをベースにした政策形成を支援していこうとするものです。

GDNそれ自体についてはWEBサイトをご参照ください www.gdn.org
またGDNの日本ネットワークである GDN-JAPAN に関しては JICAのWEBページの中にサイトがあります。http://www.jica.go.jp/gdn/japanese/index.html

今回のプラハ会合のテーマは「経済統合とその行方(Regional and Global Integration: Quo Vadis?") で、地域的あるいは世界的な経済統合が進みつつある中で2008年に発生したリーマンショック以降の世界的危機を踏まえて、今後どのような経済統合を目指していくのか、市場や政府のあり方を考え、改革していくべきか、などについて活発な議論が行われました。

GDN総会では全体会合(Plenary)と分科会(Parallel Session)が口語に行われます。また、公式ディナーの際に、ノーベル賞受賞者など著名な学者による講演が行われます。今回、私は16日の午前中に行われた分科会「アジアにおける経済統合、貿易、インフラストラクチャー、金融(Economic Integration in Asia, Trade, Infrastructure and Finance)の座長とインフラについてのプレゼンテーションを担当しました。

これらセッションの中からいくつかを選んで、順次、報告していきたいと思います。

プラハでの世界開発ネットワーク(GDN)会合

1月16日から18日の間、プラハで開催された世界開発ネットワーク(GDN)会合に参加しました。16日には「アジアの経済統合」を議題としたセッションのチェアを務めました。

GDN会合は毎年1月中旬に開催され、その時点でもっとも緊急・重要と考えられている問題を中心に議論が行われています。GDNの議論の動向は国際開発関係者にとって見逃せないものとなっています。

以下、順を追って内容を紹介いたしたいと思います。

その前に、1月15日、成田からフランクフルトへ向かう飛行機から撮影した北極海です。今回のフライトはかなり北側を通り、北極海-バレンツ海をかすめて行きました。眼下に見る海氷は割れているところもありますが、温暖化が叫ばれているなか、氷ついた海面を見るとちょっとほっとします。Dsc_0015

2010年1月 1日 (金)

ラッシュ・リンボー

みなさん。あけましておめでとうございます。

日本ではほとんど知られていないので、どのマスコミでもキャリーしていないみたいですが、米国の人気トークショーのホスト、ラッシュ・リンボー氏のニュースがCNN Breaking News で配信されてきました。

Talk radio show host Rush Limbaugh "resting comfortably" at hospital after suffering chest pains. 

要は病院に担ぎ込まれたということなのですが、ラッシュ・リンボー氏は保守派のオピニオン・リーダーとして有名です。とにかくリベラルな価値観が嫌い。国家の安全保障が第一、しかし福祉には反対。小さな政府で自己責任。もちろんオバマ政権が進める医療保険改革にも反対。オバマ大統領のノーベル平和賞受賞にも「米国の戦略オプションを狭める」という理由で反対、地球環境問題などには懐疑的、番組では徹底的な民主党批判、労組には敵意むき出し・・・というような右派丸出しのホストですが、政治的立場は別にして、あまりにも弁舌が明快なので、面白いです。全米では1300万人のリスナーがいるとのこと。日本ではマスコミはどうしてもリベラル派の動きが伝えられますが、ラッシュ・リンボー氏のような草の根保守が米国ではきわめて強いということも冷静に認識しておいたほうが、対米関係のためにもいいと思います。

日本では夕方、米軍放送(AFN)でオンエア」されています。

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